- ゆっきー監督
ゆっきー監督のサブカルチャー談義9
パソコンがクラッシュしてしまい、だいぶ更新できませんでした。
失礼しました。
では早速9回目のサブカル談義いってみましょう。
今回おススメするのはこちらです。

1999年のアメリカ映画。ポールトーマスアンダーソン監督の「マグノリア」です。
3時間を超える長大な群像劇。
元々群像劇は好きだった僕ですが、このマグノリアのストーリーテリングは神懸っています。こんなに巧みに全員のキャラクターを明確に描いて、上手く一つにまとめることがどうしてできるのか、と初見では腰が抜けるほど衝撃を受けました。
ポールトーマスアンダーソンは、元々じっくりと硬派に物語を語る、僕的には「無骨派」なイメージです。
なぜか彼の映画からは常に音楽で言うブルーズを感じます。
巧みな話術で、魂に語り掛けてくるような映画ばかりです。その技術があまりに見事なので、何を見ても、常に胸がえぐられます。
とはいえ、マグノリア以前の「ハードエイト」「ブギーナイツ」は、どこかあか抜けない感じがあり、面白さの割には正直そこまで胸には刺さってこなかったのです。
でも好きな監督だったので、当時マグノリアを映画館で見れなかった僕はDVDが出ると真っ先に買ったのですが…
素晴らしすぎてサントラまで買ってしまいました。
まず、トム・クルーズというドル箱スターを起用しておきながら、全くセレブ扱いすることなく、美味しい究極のサブキャラ扱いしているのが良いですね笑。
誘惑してねじ伏せろ!
女を口説く一流ペテン師のような役ですが、このトムクルーズはキャリア最高の演技をしているのではないでしょうか?
ジュリアンムーアのかなりヤバイ妻など、もう、役者がひたすらに素晴らしい。
このマグノリアは全員がほんとの意味で主人公なので、トム・クルーズ一人が目立ってもいけません。
その辺りのバランスもまた秀逸です。
大御所たち、実力派ばかりで固めたキャスティングは確実に大成功です。
ところがこの作品、妙なもので、作品力が素晴らしく、ベルリン映画祭でグランプリまでとったはずなのに、なぜか日本では、という世界でも、そこまでのムーブメントを起こしていません。
今ではカルトムービーなどと呼ばれているほどです。
これはひとえに、伝説とまでなっているエンディングのせいでしょう。
このエンディングを見て「?」と思わない人はきっといません。
重厚で泣ける物語があまりにインパクトがあるエンディングの「?」に、持っていかれてしまった感は拭えません。まさに賛否両論のエンディング。
多分日本人やアメリカ人は好きではないでしょうね。
それも含めて僕はこのマグノリアをぜひみなさんにおススメしたいと思っています。
今の原作ありきの映画制作、予定調和のストーリーに確実に一石を投じる映画の一つです。マグノリアは映画の発想は自由だと見事に語ってくれています。
その後ポールトーマスアンダーソンは「パンチドランクラブ」を作り、カンヌ映画祭で監督賞を受賞。
「ゼアウィルビーブラッド」ではアカデミー賞
「マスター」ではベネツィア映画祭
など、作る映画全てが映画祭で評価されるという、偉業を達成していきます。
にも関わらず、やはり日本では知名度がありません…悲しいことです。
もちろん映画祭で入賞したから、知名度があがるということはそうそうありません。あくまで映画関係者や、マニアにとっては偉業ですが、特にプロモーションをかけなければ一般人に、映画監督の名前が響くことはないでしょう。
さらに言えば、このポールトーマスアンダーソンは、才能の塊のような人ですが、かなりのひねくれ者です。
絶対に一筋縄ではいかない物語を書きます。
僕が見たものは次の「インヒアレントヴァイス」という作品が最後なのですが、これはトマスピンチョンが原作ということもあり…
ツタヤで一本しか置いていないのも、悲しいながら頷ける作品ではありました。
ほんと、ぶっとんでる作品でしたねえ笑。最高でした。
ストーリーではなく、感覚のパズルをはめこんでいくような映像。
秀逸です。ほんとによくこんな映像の脚本が書けるものだと、その才能に嫉妬すらしてしまいます。
こういった作品がツタヤには一本で、駄作と分かっているブロックバスター映画に無駄にスペースを譲っているというこの現状のカルチャーは嘆かわしいですね。ビジネスだから仕方ないのでしょうけれど…。
せめてこっちも3本くらいは置けよ、と言いたくもなります笑。
3時間の映画を見るのはそれだけで体力を消耗しますが、その時間は必ず無駄にはならないとここでお約束しましょう。
マグノリア、最高傑作の一つです。